渋沢駅1分
消化器内科・乳腺外科・外科・肛門外科・内科
医療コラム
便失禁について
2025.04.02
- 便失禁とは?
便失禁とは、便のコントロールがうまくできず、意図せず便が漏れてしまう状態を指します。特に、自分で意識して便を留めようとしても肛門から漏れてしまう場合を指し、生活の質(QOL)の低下につながることがあります。
- 便失禁の原因
便失禁の原因には、さまざまな要因が考えられます。
- 加齢によるもの:加齢とともに肛門周囲の括約筋が衰え、肛門の締まりが弱くなります。
- 括約筋や神経の損傷:出産時の会陰切開や痔核・痔瘻の手術、事故による損傷などが影響します。
- 直腸・肛門の病気:直腸脱や腫瘍などが原因となることがあります。
- 直腸がん手術後の影響:直腸がんの手術後に発症することがあります。
- 内科的疾患:糖尿病などの影響で肛門の筋力が低下し、便失禁を引き起こすことがあります。
- 便失禁の程度
便失禁の程度は軽度から重度までさまざまです。
- 軽度:まれに便が漏れるが、日常生活には大きな影響がない。
- 中等度:頻繁に便が漏れ、パッドを使用する必要がある。
- 重度:常にパッドを必要とし、生活に大きな支障をきたす。
便失禁の影響を評価するために、漏れる頻度やパッドの使用状況を点数化する方法もあります。
- 便失禁の検査
便失禁の診断には、以下の検査が用いられます。
- 直腸指診:医師が指を肛門に入れ、括約筋の強さや病変の有無を確認します。
- 肛門内圧検査:括約筋の機能を測定し、肛門の締まり具合を評価します。
- 直腸造影:造影剤を使用し、便の漏れ具合や排便の様子を調べます。
- 超音波検査:肛門の内部を観察し、括約筋の損傷を確認します。
- 便失禁の治療
便失禁の治療には、保存的治療(手術を伴わない治療)と外科的治療(手術)があります。
1)保存的治療(手術をしない方法)
- 薬物療法:整腸剤や下剤を使用して腸の動きを調整。
- 理学療法(肛門トレーニング):肛門周囲の筋肉を鍛える運動を実施。
- バイオフィードバック:機械を使用して、肛門の締まりを自覚しながら調整する方法。
2)外科的治療(手術が必要な場合)
- 仙骨神経刺激療法:埋め込み式装置を使用し、仙骨神経を刺激して便のコントロールを改善。
- 括約筋修復術:損傷した括約筋を縫合し、機能を回復させる。
- 筋移植手術:太ももの筋肉を肛門の周囲に巻きつけ、括約筋の補強を行う。
- 便失禁は治るのか?
治療の効果は、便失禁の原因や重症度によって異なります。
- 軽度の便失禁:保存的治療のみで症状が改善することが多い。
- 中等度~重度の便失禁:保存的治療で改善しない場合、外科的治療が必要になることもある。
- 便失禁でお悩みの方へ
日本国内では、約500万人が便失禁に悩んでいるとされています。加齢や出産後の影響で発症することが多く、決して珍しい症状ではありません。
「恥ずかしい」と感じるかもしれませんが、適切な治療を受けることで症状を改善することができます。お悩みの方は、ぜひ専門医にご相談ください。