渋沢駅1分
消化器内科・乳腺外科・外科・肛門外科・内科
医療コラム
過敏性腸症候群(IBS)について
2025.02.26
- 過敏性腸症候群(IBS)とは?
IBS(過敏性腸症候群)は、大腸の機能異常によって腹痛や便通異常(便秘・下痢)を引き起こす疾患です。日本人の約10~15%が罹患しており、20~40代に多く見られます。生命に影響を与える病気ではありませんが、生活の質(QOL)に大きく影響するため、適切な治療が必要です。
- 原因
IBSの原因は明確ではありませんが、以下の要因が関係していると考えられています。
- 脳腸相関の異常(ストレスの影響)
- 消化管運動の異常(蠕動運動の過剰または低下)
- 知覚過敏(腸の刺激に対する過敏性)
- 感染後IBS(細菌・ウイルス感染後の腸機能異常)
- 症状
- 腹痛や腹部不快感(排便によって軽減することが多い)
- 便秘または下痢の反復
- ストレスによる症状の悪化
- 慢性的または再発性の症状の持続
- 診断
IBSの診断には、RomeⅣ診断基準が用いられます。
RomeⅣ診断基準
- 最近3か月間、月に4日以上繰り返す腹痛があり、以下の2つ以上を満たす。
- 排便と症状が関連する
- 排便頻度の変化を伴う
- 便の形状が変化する
- 6か月以上前から症状があり、最近3か月間は基準を満たす
IBSの分類(便の特徴により分類)
- 便秘型(IBS-C):硬い便が多く、軟便は少ない
- 下痢型(IBS-D):軟便・水様便が多く、硬い便は少ない
- 混合型(IBS-M):便秘と下痢を繰り返す
- 分類不能型:上記いずれにも当てはまらない
- 治療
IBSの治療は、生活習慣の改善・食事療法・薬物療法が中心となります。
1)生活習慣の改善
- 規則正しい生活を送る(睡眠・ストレス管理)
- 食事の見直し(刺激物・脂肪分の多い食事を避ける)
- 適度な運動を行う
2)薬物療法
IBSの症状に応じて、以下の薬剤が使用されます。
腸の調整薬
- ポリカルボフィルカルシウム(コロネル®):便の水分バランスを調整
- プロバイオティクス:腸内環境を整える
- 酸化マグネシウム:便を柔らかくする
腸の機能調整薬
- トリメブチン、臭化ブチルスコポラミン:腸の動きを整える
- セロトニン受容体拮抗薬(ラモセトロン:イリボー®):下痢型IBSに有効
- 抗コリン薬(メペンゾラート:トランコロン®):腸の過剰な動きを抑える
便秘治療薬
- 酸化マグネシウム、センノシド、ピコスルファート(従来の便秘薬)
- 新しい便秘治療薬(アミティーザ®、リンゼス®、グーフィス®)
- 生活上の注意点
- ストレス管理が重要(IBSはストレスの影響を受けやすい)
- 食事の見直し(炭水化物・脂質・香辛料・アルコール・カフェインを控える)
- 適度な運動(腸の動きを整える)
IBSは適切な治療と生活習慣の見直しで症状を改善できます。お困りの方は、お気軽にご相談ください。